狂犬病予防


狂犬病とは

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる人と動物の共通感染症で、犬、猫、コウモリなどに感染し、このウイルスに感染した動物にかまれると、人にも感染します。致死率の高い感染症ですが、 1950 年代以降、わが国にはもはや存在しないものとされています。しかし現在も、世界では毎年、数万人もの人が狂犬病で命をおとしています。

交通手段の発達によるグローバリゼーションが進み、地球規模での移動が頻繁かつ日常的になったことを考えると、わが国に海外から狂犬病が侵入する可能性のあることは否定できず、引き続き狂犬病に対して注意を払うことが必要です。 それに伴い狂犬病予防法の定めるところに従って、愛犬の登録、予防注射を受けることは、愛犬家が社会に対して負っている義務と言えます。



何が原因?

狂犬病ウイルスは正式にはラブドウイルスと言います。 狂犬病は家畜動物では家畜伝染病予防法、犬では狂犬病予防法、人では感染症の4類感染症に指定されています。



どうしてうつるの?

狂犬病に感染した犬、猫、野生動物(アライグマ、スカンク、コウモリ、キツネなど)に人が咬まれると感染します。 人の体内に入ったウイルスは神経を介して中枢神経に運ばれます。潜伏期は一般に1か月ですが、短い人で10日くらい、長いときは2年におよぶことがあると言われています。



症状は?

特徴のある症状として、水を飲むときに痛みを伴う激しい喉頭部のけいれんがみられることです(恐水症)。 その他、頭痛、不安感、興奮、錯乱などの神経症状が現れ呼吸麻痺で死亡する怖い病気です(人、動物でも致死率100パーセントと言われています)。人と動物の共通感染症のうちで、もっとも恐れられています。



予防は?

日本では法律で、生後3カ月以降の飼い犬は毎年1回、狂犬病ワクチンの接種を受けることが義務づけられています。 また、野生動物にはむやみに近寄らないこと(咬傷の予防)などが大切です。



アメリカの報告

アメリカ大陸ではコヨーテ、スカンク、アライグマのほか、コウモリが病原巣になっています。ウイルスはコウモリの唾液腺などに長期潜伏、越冬し、発症コウモリは人や家畜を襲います。こ の10年間に犬、コウモリなどからの感染で32人が死亡しています。韓国では1999年死亡例が、2002年にはモンゴルで流行がありました。幸い日本では現在のところ感染者の報告はありません。



野生動物の狂犬病はどうやって予防するの?

世界各国で事情に応じ各種のワクチンが使われており、野生動物に対しては主に経口用生ワクチンの試みがあります。 ドイツやフランスでは野生のキツネの狂犬病流行を阻止するために、キツネ用に開発された狂犬病ワクチンを餌に入れて空中から散布してキツネを免疫しています。米国ではアライグマ用の狂犬病ワクチンも開発されています。

現在市販されている動物用狂犬病ワクチンは犬、猫用のワクチンです。犬、猫以外の愛玩動物や野生動物に接種しても効果はあると考えられていますが、有効性は確認されていません。



狂犬病:症例

 ネパールを旅行中のアメリカ人女性が、カトマンズ市内を散歩しているとき、道ばたにかわいらしい犬を見かけた。かわいらしさに、ネパールでは狂犬病が多く発生しているということを忘れて、女性は思わず犬をなでようと手を出した。女性の思いに反して、犬はその手に咬みついた。狂犬病のことが一瞬頭をよぎったため、女性はしばらく犬を観察したが、変わった様子はなかったので、そのまま旅行を続けた。帰国後、カトマンズで犬に咬まれてから2カ月経ったある日、咬まれた左手に痛みを感じた。2日後、痛みは次第に腕の上方に広がったため、病院で診察を受けた。ここでは神経炎といわれて、抗炎症剤を処方された。その2日後、呼吸困難や喉のけいれんが起こるため、再び病院を受診した。女性が水を飲もうとしたり、顔に風が当たると首や喉の筋肉にけいれんが起きたため、狂犬病が疑われた。他の病院に紹介されて入院したが、翌日心停止し、5日後に死亡した。女性の唾液から狂犬病ウイルスが証明され、狂犬病であることが確定した。

(引用:CDC:MMWR:46;267-270,1997,一部改変)


世界における狂犬病の発生状況
(平成15年5月現在)